「いま何に賭けるのか」(PHP)
女性の下着メーカー「ワコール」の社長塚本幸一さんの、戦争体験から創業、世界進出に向けた目標や組織の築き方など、ご本人が体験に基づいた本です。
生死を分ける戦争から生還された体験をもとに、自己の考えを述べるとき「本質的に私の考えを分かってもらえないのではないか」そういう不安があるそうです。そうした体験をした人の言葉とは、絶対自分の価値観の範囲だけでは判断してはダメなのだと感じたし、そうした思いでこの本も書かれているのだと思うと、言葉への重みを深く感じながら読みました。
そうした体験を乗り越えてきた塚本さんは、「これからは生かされた人間として必ず何かをやり遂げたい」という決意のもと、商品に対する思いを全力で商売に打ち込み、その行動は、真似ができるかという問題以上に、情熱と野心があります。
その中で、一番共感した箇所は、松下幸之助さんのことに触れているところです。
「最初から、立派な人間が松下に集まっているはずがないです。ところがその人間が松下をつくる、そういう人間に育てられたんです。人間誰でも長所を持っているわけですね。それに自信を与え、ひき出し、それにどんどん花を咲かせていくわけです。みんな素晴らしい能力者になっていくはずです。それが偉大な経営者だと思います。」
そうだと思います。FUNでも松下幸之助さんの「松下電器は、人を作っている会社です。併せて電器も作っています」の言葉は有名ですが、これこそ最大の人材育成であります。思えば、現在は様々な商品や便利な道具はありますが、昔からずっと変わっていないものは、「人の育て方」だと思います。
「日本という国は大家族主義を作り、その民族の和という精神を一番基本にしてやってきた、それを戦後忘れている」
こうした松下幸之助さんの言葉を知ったとき、この塚本さんも、一時期は「組合」ができて経営自体うまくいかず悩んでいたそうです。講演の中に出てきた出光経営を知り、「人間の信頼感の上に経営が作られておるんだ」と気付き、そうした経営を目指していきます。
「私自体が自分の社員を信頼できなかったら、真の経営というリーダーシップをとれるわけがない」
上の松下幸之助さんの言葉を使えば、
「最初から、立派な社員が企業にいるはずがないです。ところが社員が経営者をつくる、そういう社員に育てられたんです。社員誰でも長所を持っているわけですね。それに自信を与え、ひき出し、それにどんどん花を咲かせていくわけです。みんな素晴らしい能力者になっていくはずです。それが偉大な経営者だと思います。」
といえるのかもしれません。また、最初から立派な経営者もいないのです。お互いが学び信頼を深めてこそ、できる仕事があるのだと思います。だからこそ、「君たちが経営者によって信頼されておる社員である」とも言い切れるのだと思います。
「日本人だけができる素晴らしい人間関係の中において、はじめてできる成果だと思うのです。(略)私は日本というのは、素晴らしい精神文化を持ち、世界でも珍しい国だと思うのです。素晴らしい民族です。そういう意味ではもっと正しい自信を持ってやる時代が来たのではないかというように思います。」
「経営は、可能性の芸術」とする裏には、「人への信頼関係」が無くしては辿り着けない作品の一つなのでしょう。塚本さんが言われる本質的な部分にどこまで理解できているかは分かりませんが、「日本人だから持っている素晴らしい精神文化」を生かして、これからの仕事を見直してみるのもよいきっかけではないでしょうか。
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